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第995話

Author: 宮サトリ
「黒田さん、霧島さんがまだ体を完全に壊していないうちに、彼女を解放しませんか?それは彼女のためであると同時に、あなたご自身のためでもあります......

いずれ霧島さんが記憶を取り戻しても、黒田さんが彼女に尽くしてきたことは必ず思い出します。そうすれば敵同士になることもないでしょう。何より、黒田さんはずっと彼女の幸せを願ってきたのではありませんか?」

言葉を続けながら、友作はさらに説き伏せようとした。

「本当に霧島さんに万が一のことが起きてからでは、取り返しがつかなくなります。そのときどれほど後悔しても、意味はなくなるのです」

「......もういい!」

揺れ動いていた弘次の心は、何かに刺激されたかのように一気に爆発した。

氷のように冷たい眼差しを突き刺し、彼を睨みつけた。

「俺を説得できると思っているのか?友作!お前が仕えているのは俺だ。瑛介じゃない!」

その様子に、友作は弘次の感情が制御できなくなってきているのを感じ取った。

ここ最近、彼の感情が爆発する場面が目に見えて増えている。

だが友作は怒らず、淡々と答えた。

「宮崎さんもまた、黒田さんに情けをかけてきたのではありませんか?」

「当時あの人がどれほどの重傷を負ったか、そしてあなたが今ここに立っていられる理由も......黒田さんなら分かっているはずです。宮崎さんも霧島さんも、黒田さんをずっと友人だと思ってきました」

「友人?」

弘次はその言葉を噛みしめ、笑みを浮かべながらも目は少しも笑っていなかった。

「俺から女を奪っておいて、それが友人か?」

「女を奪う?」

友作は遠慮なく言い返した。

「黒田さん、霧島さんは元々宮崎さんと一緒にいたのです」

「それがどうした?当時、あいつは弥生の目の前で『自分の心にいるのは奈々だけだ』と口にした。あの時、彼女がどう感じたか考えたことがあるのか?」

友作は黙り込んだ。

しばらくして、静かに言葉を選んだ。

「過去に何があったか、僕には分かりません。ただ今もなお二人が黒田さんに立ち返ってほしいと願っていることは確かです。そして僕は知っています。人の気持ちは無理に押さえつければ、関わったすべての人が傷つくだけです」

弘次は黙って立ち去った。

残された友作は、その場で長く深いため息をついた。

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